補助金・給付金・支援金には、法人企業だけではなく、個人事業主が利用できるものもあります。
原則返済の必要がなく、資金繰りに余裕がない時にも役立つため、起業したばかりの個人事業主の方にもおすすめの資金調達法です。
この記事ではそんな個人事業主向けの補助金・給付金・支援金には何があるか紹介します。
補助金・給付金・支援金のメリット・デメリットについても解説していきます。
ぜひこの記事を参考にして、自分自身の業務に役立つ補助金・給付金・支援金を検討してください。
個人事業主が利用できる補助金・給付金・支援金の一覧
ここからは個人事業主が利用できる補助金・給付金・支援金をまとめて紹介していきます。
申請には事業計画書や設備投資の詳細な計画書などが必要です。
しっかりサイトに掲載されている公募要領を確認しましょう。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染拡大や国際情勢の影響で業績が悪化したり、大きな事業変革を迫られたりしている事業者に、新しい商品やサービスを作り出してほしいという狙いで作られた補助金です。
事業の方向性によって複数の事業類型が設定されており、事業類型によって給付額が異なります。
例えば成長分野進出枠(通常類型)では、中小企業の場合、補助上限額が3000万円、補助率が1/2(※短期に大規模な賃上げを行う場合、補助上限額が4000万円、補助率が2/3)となります。
また別の事業類型であるコロナ回復加速化枠(最低賃金類型)では中小企業の場合原則補助上限額が2,000万円、補助率が中小企業2/3となっています。
現在公募中である12回の公募期間は令和6年4月23日 から 令和6年7月26日(金)18:00までとなっています。(4/30時点で申請受付開始日は調整中)
雇用調整助成金
雇用調整助成金は、経済的な理由で事業を縮小する際に従業員の雇用を維持するための制度です。
従業員に休職してもらうなど雇用調整を行う必要がある場合に適用され、事業主が従業員に支払う休業手当などの一部を助成します。
教育訓練を行ったり従業員を出向させたりして雇用を維持する場合にも支給の対象となります。
対象者は雇用保険に加入している事業者で、売上高や生産量の減少などいくつかの条件を満たす必要があります。
助成金の上限は1人1日あたり8,490円で、中小企業は2/3の助成率が適用されます。
休業や教育訓練の場合には、1年の間に最大100日分、3年の間に最大150日分の受給が可能です。
雇用調整助成金を受け取るには、雇用調整の前に計画届を提出し、雇用調整を行った支給対象期間の翌日から2カ月以内に支給申請を行うことが必要です。
また、コロナ禍に始まった「雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)」は2023年3月31日をもって終了し、2024年以降は通常の雇用調整助成金のみとなっているため注意しましょう。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、従業員が少人数の法人・個人事業主を対象とする補助金で、継続的な経営を行うための販路の開拓や業務の効率化などの取り組みをサポートするものです。
補助金の対象には、「通常枠」「賃金引上げ枠」「創業枠」などの異なる5つの枠があるため、自分の業種が当てはまる枠を選びましょう。
小規模事業者持続化補助金では、公募に応募する前に小規模事業者が商工会・商工会議所との相談・支援を受け、計画書(補助事業計画書)を作成することが求められます。
その後の公募審査で、採択されれば交付が決定します。
事業終了後に実施報告書を提出し、それに応じて補助金が確定・交付されます。
補助上限額は通常枠の場合50万円、特別枠の場合は200万円です。
さらに免税事業者からインボイス発行事業者へ転換した場合、補助額の上限に50万円が上乗せされる「インボイス特例」もあります。
直近の公募である第15回の受付締切は2024年3月14日でした。
次回公募の予定は今の所未定です。
今後の公募予定が気になる方は、公式ホームページを確認するようにしましょう。
IT導入補助金
IT導入補助金は、経営課題を解決するためのITツールの導入費用を補助する制度です。
対象となる費用には、ハードウェアやソフトウェアの導入費用、セキュリティ対策ソフトなどの購入料・利用料が含まれます。
IT導入補助金は通常枠、インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)、などの5つの補助対象の中から、目的に沿ったいずれかの枠を選んで応募します。
枠ごとに補助上限額や応募条件が異なるため、必ず募集要項を確認しましょう。
審査を経て申請が採択され、補助金の交付が決定した後に、ITツールを導入し事業実績報告を行い、それに応じて補助金が交付されます。
その後、どのくらい業務の効率化や売り上げアップができたか事業実施効果報告を継続して行うことが求められます。
補助金の額は通常枠の場合、1プロセス以上で5万円以上150万円未満、4プロセス以上で150万円以上450万円以下、補助率は1/2以内です。
どの枠も年度内に複数回締め切りがあります。締め切り回数は枠によって異なりますが、最後の締め切りはどの枠も2024年6月19日 となっています(2024年5月1日現在)。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、派遣社員やアルバイトなど非正規雇用労働者のキャリアアップを促進するための制度です。
雇用保険適用事業所の事業主がキャリアアップ管理者を置き、キャリアアップ計画を作成するなど要件を満たす事で受給できます。
キャリアアップ助成金には、大まかにわけて二種類の助成金があります。
正社員化コースなどを含む正社員化支援と、賃金規定等改定コースなどを含む処遇改善支援です。
助成金の支給額はコースによって異なり、例えば有期雇用から正社員になる場合、中小企業の場合1人あたり57万円が支給されます。
キャリアアップ助成金の申請には、各コース実施前にキャリアアップ計画の作成・提出を行い、事業所の所在地の都道府県労働局・ハローワークで認定を受けることが必要になります。
支給申請期間は、取組後6か月の賃金を支払った日の翌日から起算して2か月以内です。
ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業・小規模事業者等を対象に、サービス開発や試作品開発・業務改善の支援を行う制度です。
直近の公募は令和6年3月27日に締め切られた18次締切です。
対象は省力化(オーダーメイド)枠、製品・サービス高付加価値化枠(通常類型、成長分野進出類型(DX・GX))、グローバル枠という事業類型があり、それぞれ要件が異なります。
この補助金のポイントは、上限額が数千万と大きい額であるところです。
例えば、省力化(オーダーメイド)枠では従業員規模21~50人の場合、補助上限額3,000万円となります。
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継をきっかけに新しい業務を手掛けたり、事業再編・事業統合に伴う引継ぎを行う中小企業を支援する制度です。
2024年は経営革新、専門家活用、産業・再チャレンジの3つの取り組み枠があり、それぞれ補助率、補助上限額などが異なります。
最も大きい補助上限額は、経営革新枠の800万円となります。
自分自身の仕事の内容に関連する枠を選びましょう。
直近に行われた公募は9次公募で、2024年4月30日に締め切られました。
今回の一覧以外にも、各自治体独自の補助金・給付金・支援金があります。
事業所がある地域や自治体のホームページをチェックしてみましょう。
個人事業主の補助金・給付金・支援金の申請方法
こちらでは、上記で出てきた補助金と助成金の大まかな申請方法を説明していきます。
助成金や補助金の申請方法は、種類やコースなどによって細かい部分が異なります。
必ず、公式サイトやパンフレットで注意事項などの確認を行ってください。
助成金の申請方法の流れ
- 申請要項をパンフレットや公式サイトで確認
- 計画書を所轄の労働局またはハローワークに提出
- 計画書に沿って事業を行う
- 所轄労働局に支給申請を行う
- 審査を受け、支給決定すれば助成金が振り込まれる
補助金の申請方法の流れ
- 申請要項補助金を提供している機関や団体のホームページやパンフレットで確認
- 公募期間中に必要書類を準備し申請
- 審査後、採択されれば書類を作成し交付申請
- 交付決定後、事業の実施
- 定期的に中間報告を行う
- 事業実績報告の書類を送付。その後、補助金が受給され振り込まれる。
- 補助金交付後も事業状況の定期報告を行う。
補助金・助成金は、原則事業完了後に申請を行ってお金をもらう形になります。
銀行融資の様に、先にお金がもらえる訳ではないため注意してください。
また公募内容や上限金額、条件はその都度変更される可能性があるため、しっかりと募集要項を確認しておきましょう。
補助金・給付金・支援金を申請するメリット
個人事業主が助成金や補助金を利用するメリットにはどんなものがあるでしょう。
返済義務がない
助成金や補助金は、通常返済の必要がありません。そのため返済を気にすることなく、資金を人材育成や設備投資のための経費へと活用することができます。
事業の信用度が上がる
助成金や補助金を受けるためには厳しい公的な審査が必要になります。
その審査を通過して採択されたということで、その事業の信用度が向上し、ひいては企業としての信頼度も高くなります。
金融機関の融資と比べて審査が通りやすい
ある程度の業績などがないと審査に受からない金融機関の融資と比べて、補助金は初めて申請する場合でも審査が通ることがあります。
また、助成金は補助金と違い、条件をクリアしていれば原則審査なしで支援が受けられます。
補助金・給付金・支援金を申請するデメリット
メリットが多い助成金や補助金ですが、もちろん、いくつかのデメリットもあります。
支給までの時間がかかる
助成金や補助金は金融機関の融資とは異なり、すぐに資金が手に入りません。
計画書通りに事業が行われたかを確認した後に、後払いされる事が一般的です。
また不正受給を見極めるために、審査自体が長期間で支給までに時間がかかる例もあります。
手続きが複雑
助成金や補助金の申請手続きは複雑であり、多くの書類や条件を満たす必要があります。
特に個人事業主やフリーランスの場合、手続きにかかる負担が大きく本業に支障が出る可能性もあります。
受給が難しい場合がある
助成金や補助金は採択されるまでの競争率が高く要件が厳しいため、申請しても受給が難しい場合があります。
必ずしも受給できるとは限らないため、その点も考慮する必要があります。
これらのデメリットを踏まえて、助成金や補助金の利用を検討することが重要です。
助成金・補助金・給付金の申請準備は期限に注意してお早めに
いかがでしたでしょうか。
助成金・補助金・給付金にはたくさんの種類があり、メリット・デメリットがあることが伝わったかと思います。
また給付金の多くは、それぞれに申請期限が定められています。
少しでも期限を過ぎたら申し込むことができず、次回の公募まで待たなければいけません。
給付金の種類によっては何度も公募が行われる場合もありますが、一度きりの場合もあります。
まずは資料や公式サイトで期限をチェックして、間に合うように準備してください。