コロナ禍でも加熱する不動産価格の高騰。
1980年から1990年代のバブルのように崩壊するのでは?という話を聞いて不安になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、本当に今は不動産バブルなのか?2024年以降不動産価格はどうなるのか?などの気になる部分について解説していきます。
バブルの影響を受けにくい不動産についても紹介していきます。
ぜひご覧ください。
2024年までの不動産価格の推移
参照:不動産価格指数(令和6年1月・令和5年第4四半期分 )https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001740590.pdf
不動産価格の推移について、上記の不動産価格指数(2010年の不動産価格の平均を100とした際の比較数値)のグラフを例に説明していきます。
上記のグラフを見ると、2009年頃に不動産の価格が下がり、2013年付近で上昇に転じていることが分かります。
これは、2012年の政権交代に伴い始まった、いわゆる「異次元の金融緩和」による低金利や東京オリンピック開催決定などが原因で、不動産価格が高騰し始めたことを表しています。
特に低金利は現在まで続く不動産価格の高騰を支えていると言っても過言ではありません。
例えば首都圏の中古マンションの成約物件価格は金融緩和が始まった頃から11年連続で上昇しており、2023年度は4,700万円となっています。
参考:首都圏不動産流通市場の動向(2023年度)
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/sf/sf_202304-202403.pdf
また、1990年代のバブル期の住宅ローン金利は約8%であったのに対して、2024年3月時点の住宅ローンは変動型で約0.4%、固定金利型で約1.5%。
現在の不動産価格の高騰はバブル期と同じという意見もありますが、金利がかなり低く、返済額が高くないという大きな違いがあります。
また、2020年度にも急激な価格上昇が見られます。
これはコロナウイルス感染症の影響下、「ステイホーム」という考え方が普及したという理由があります。
2020年前半はコロナウイルス感染拡大の初期の混乱期ということもあり、不動産の買い控えが起こっていました。
しかしその後のコロナ禍の長期化によりリモートワークやオンライン授業が一般的になって、家にいる時間が増えた人が多くなりました。
そして、新たな居住環境を求め、家を購入する層が増大したのです。
また、これまでは利便性のいいマンションが人気でしたが、部屋数を増やしたい、家族で遊べる庭が欲しいなどの考えから、地価の安い郊外に広めの家を買う人も増えてきました。
しかしこの流れは一時的で、2022年頃から増加率は落ち着いています。
不動産バブルはなぜ起きるのか
コロナ禍を経ても終わらない、2012年から続く不動産価格の高騰。
「この高騰は不動産バブルだ」と評されることもあり、不安になる方も多いと思います。
そもそも、不動産バブルとはどういう状態を指すのでしょうか?
不動産バブルとは何か?
不動産バブルの定義は、「不動産の価格が適正な水準を過度に上回ること」だと言われています。
しかし2000年7月当時の日本銀行総裁は「バブル期を特徴づける1つの要素は、新時代への熱気が社会を包み、期待が著しく強気化する、という現象である。その意味で、バブルを地価や株価といった資産価格だけで捉えるのは不十分」と発言しています。
つまり、不動産バブルは単純に不動産価格が高騰するといった状態だけではなく、そこに至る様々な要因で判断することが必要だと分かります。
不動産バブルかどうかの判断ポイント
それでは、現在の不動産価格高騰がバブルかどうか、どのように判断すればいいのでしょうか。
3つのポイントに分けて説明します。
●価格の局地的な上昇
…過去のバブルでは不動産の取引価格や地価の上昇が局地的でした。
そのため、この特徴が現れていれば、バブルの可能性があります。
●取引価格と収益価格の大きな乖離
…収益価格とは、将来期待できる利益と現在の利益の合計です。
この収益価格と実際の取引価格の乖離が大きくなっている場合も注意が必要です。
●イールドギャップが低水準
イールドギャップとは、利回りから国債などの長期金利を引いたときの差を表します。
イールドギャップが大きければ大きいほど、現在収益性が高い商品や資産ということになります。
現在需要がある収益性の高い不動産の価格が高騰する状態はバブルではありません。
逆に、イールドギャップが低い、国債よりも利回りの低い不動産を購入するということは、現在ではなく将来の利益を期待していることになります。
そういった不動産を多数の投資家が購入し、現在の実態とかけ離れた不動産の高騰が起こることこそバブルであると言えます。
2024年の不動産市場もバブルは続く?
それでは、現在の日本の不動産市場はバブル状態なのでしょうか?
バブル状態であれば、今後も続くのか、それとも崩壊するのか、どちらなのでしょうか?
そもそも日本は不動産バブルなのか?
2024年5月現在、日本が不動産バブルを迎えているかどうかについては、意見が分かれています。
それは局地的な不動産価格の高騰は見られるものの、上記の「不動産バブルかどうかの判断ポイント」におけるイールドギャップの水準が比較的高いためです。
例え今の状況がバブルであり、今後バブルが崩壊したとしても、イールドギャップの水準の高さから、かつてのような損害は被らないだろうという意見もあります。
また、1980年代から1990年代のバブル経済は過度な金融緩和政策による低金利が原因だったため、低金利政策が取られている今回も同じ状態だ、という人もいます。
どちらにしろ、今後、日本の不動産価格が暴落する可能性が全くないとは言えません。
2024年の不動産市場はどうなる?
それでは2024年の日本の不動産市場はどうなるでしょう。
実は不動産価格が一番影響を受けるのは、住宅需要ではなく金融市場の動向です。
不動産や住宅は、高額な買い物であるため、ほとんどの人が金融機関から融資を受けて購入します。
つまり、融資が受けられる人数が増えれば、不動産を購入する人数も増え、不動産価格も上がるのです。
前述したように、1980年代から1990年代は金融緩和による低金利のため、投機目的の不動産購入が急激に増加し、大幅な不動産価格の高騰が起こりました。
その後、不動産価格の高騰を抑えるための政策により、住宅ローンや不動産投資ローンなどの融資の引き締めが始まり、バブルが崩壊しました。
このように、不動産価格は、金融緩和すれば上がり、引き締まれば下がるというという仕組みになっています。
そして、2024年3月に、日本銀行がマイナス金利の解除を決定しました。
これにより、ローンの金利が上がり、不動産のバブルが崩壊するのでは?と考えられていました。
しかし実際の所、各銀行間の金利競争のため、急激に金利は上がらず、少なくともアメリカのような4%から5%もの金利にはならないだろうというのが大多数の見方です。
実際、2023年に日本銀行が長期金利について1%を一定程度超えることを容認しましたが、固定ローンは1%後半を超えた程度で、変動金利はほぼ変わりません。
以上の理由から、金利上昇の影響は少なく、不動産価格は2024年も上昇していくのではないか?と予測されます。
もちろん、
- 金利が大幅に上がる
- 不動産関連の税制優遇措置終了
- 政権交代による大幅な政策転換
などが行われた場合、大きな下落が起きる可能性はあるため、今後の展開は注視すべきです。
バブルに強い不動産とは
現状がバブルかどうかは諸説ありますが、少なくとも不動産価格の高騰が続いていることは事実であり、そうなると今後の不動産価格の急な下落が気になりますよね。
そういった影響を受けにくい種類の不動産はあるのでしょうか。
マンション・戸建てなどの住宅
商業施設・会社の多いオフィスビル・ホテルなどと比べて、マンション・戸建ては景気の影響を受けにくいとされています。
それは、住む場所はなくてはならないものであり、不況・好景気に関わらずある一定の需要があるためです。
賃貸住宅の賃料も、景気や株価の影響を受けにくいという特徴があります。
首都圏や駅近などの利便性の高い立地の物件
住居系の不動産の中でも首都圏を始めとする都市部や駅から近い地域の物件は、今後も需要が見込まれるため、価格が下がりにくいとされています。
駅から遠い物件や利便性の低い物件は、人口減少に伴い、今後需要が少なくなっていき、賃料を下げないと借り手が見つからない可能性が高く、不動産としての価値も下がります。
これらの条件を満たす不動産の値段は下がりにくいですが、その分価格も上がります。
デメリットとメリットをよく考えながら購入を検討しましょう。
【まとめ】
2013年の低金利政策以後、日本の不動産価格は高騰を続けています。
現状バブルかどうかを判断する基準の一つである「イールドギャップの低水準」を満たしていないため、この高騰をバブルと呼ぶかどうかは専門家の間でも見解が異なっています。
低金利政策が終了することでバブルの崩壊が訪れると思いきや、2024年3月のマイナス金利解除の決定を受けてもさほど金利は上がらず、価格の高騰も続いています。
しかし大幅な価格下落の可能性はなくなっていません。
金融や不動産に関わる政策の動向には注意しておきましょう。
首都圏や利便性の高い立地のマンションや戸建てなど、バブルの影響を受けにくい不動産の購入も価格下落に備える一つの手と言えるため、検討してみてはいかがでしょうか。