「約束手形」や「手形割引」という用語を聞いたことがある人は多いと思いますが「商業手形割引」という用語は聞いたことはありますでしょうか?
今回は「商業手形割引」についてまとめましたので参考にして頂ければ幸いです。
商業手形割引の仕組みをわかりやすく解説!
商業手形割引がどういうものなのか、どのように使うのかを解説していきます。
そもそも商業手形割引って何?
商業手形割引とは手形割引とも言われます。
商取引を行う際に現金ではなく「手形」を代金が支払われるよりも前に受け取ることがあります。
その手形を支払期日前に現金に変えることを商業手形割引と言います。商業手形割引を利用する際には金利が発生します。
現金が支払われる前に手形を現金に変えるので、手形の期日までは当然金利が加算されます。
利用の流れは?
商業手形割引を利用する流れは次のとおりです。
- 商品の売買で手形を取引相手から受け取る
- 金融機関や手形割引に商業手形割引を依頼
- 商業手形割引の審査を受ける
- 割引額を差し引いた現金を受け取る
手形の支払期日は一般的に3〜5ヶ月程です。
それまでに現金が必要になった際には、商業手形割引を請け負ってる業者や金融機関に依頼を行います。
そして、業者や金融機関が行う審査に通り、現金を受け取れば商業手形割引は完了します。
審査と言っても厳しい審査ではありません。手形を受け取った「受取人」ではなく、手形を発行した「振出人」への審査を重点的に行います。
代金を支払うのは振出人なため、受取人の事業状況などが審査に影響する場合は少ないです。
商業手形割引に必要なものは?
商業手形割引に必要なものは手形以外にも様々な書類が必要になります。必要な書類は次のとおりです。
- 本人確認書類
- 収入証明書類
- 印鑑登録証明書
- 登記事項証明書
- 不動産登記簿謄本
- 3期分の決算関係書類
- 税務申告書の控え
- 預金口座が確認できるもの
上記の全ての書類が必要ではなく、金融機関や業者によっては必要書類の内容が変わる可能性もあります。
また、人や会社によっては追加資料が必要な場合もあります。当然ですが、上記の書類の他に割引予定の手形も必要になります。
計算方法は?
商業手形割引を利用する場合は「手形割引料」がかかります。
手形割引料は簡単に言うと利息のようなものです。
「手形の額×手形割引率÷365×割引実行日から支払期日までの日数」の計算で手形割引料を計算します。
そして、「手形の額-手形割引料」で受取額が求められます。手形割引率は業者や金融機関によって違いがありますが、金融機関のほうが低く設定されており、1.5〜5.5%程です。
商業手形割引専門の業者だと、金融機関よりも高く、2.5〜15%程です。業者だと、手形割引率が高い代わりにスピーディーな対応を売りにしている業者が多いです。
仮に手形の額を100万円で手形割引率を5%、期日までの日数を30日として計算してみると次のとおりになります。
1,000,000(手形の額)×0.05(割引率)÷365×30(期日までの日数)=4,109(円)
1,000,000(手形の額)-4109(手形割引料)=995,891(受取額)
計算式には割引実行日から支払期日までの日数が入ります。従って支払期日に近い方が手形割引料は低くなります。
商業手形割引のメリット・デメリットは?
次に、商業手形割引を利用した際のメリットとデメリットをご紹介しますので、参考にして頂ければ幸いです。
メリット
商業手形割引のメリットは次のとおりです。
支払期日までに現金を受け取れる
運営に必要な資金が足りなくなってしまったときなどに、支払日よりも先に現金が受け取れます。割引手数料は融資などに比べて安いので、資金に困った際には融資に比べて安く、早く、更には優しい審査で現金が受け取れます。
割引手数料が融資などに比べて安い
金融機関やノンバンクからカードローンや融資をうける際の利息は1〜18%と幅があります。利息はどの金融機関から融資をうけるのか、いつ返済完了するのかで利息が変わってきます。割引手数料を金融機関でうけると1.5〜5.5%です。幅が広い分、金融機関や業者によって幅がありますが、割引手数料の方が低くなる場合が多いです。自身の状況を把握した上で選び方を変えましょう。
審査が優しい
銀行の融資などに比べると審査が優しくなっています。手形の場合は振出人が代金を支払います。手形を使う企業は大きな企業が多いので、信用度も高いです。加えて、振出人への審査が行われるので、受取人が厳しい審査をうけることはありません。
デメリット
商業手形割引のデメリットは次のとおりです。
買い戻しをしないといけない場合がある
手形が「不渡り」になってしまった場合には、商業手形割引を依頼した「受取人」が手形割引を行ってもらった業者や金融機関から手形を「買い戻し」しないといけません。手形割引料を引いた受取額だけではなく、手形の額を全額返金する義務が生じてしまいます。この買い戻しの義務が商業手形割引の最大のデメリットとなります。もし、不渡りになってしまった場合には銀行から買い戻しの要求をされるので、分割で支払う場合には交渉の上買い戻しを行います。また、手形の買い戻しのために銀行から融資をうけると実質赤字補てんの融資となり、今後の融資や手形割引を行うことが難しくなります。他にも、手形が不渡りになった場合には振出企業へ支払い要求が行えます。しかし、不渡りになってしまっている時点で企業の経済力はとても弱まっている可能性が高いです。従って支払いを行える可能性は低いですが、可能性がないわけではないので、支払い要求を行いましょう。また振出企業が他にも手形を発行している場合も考えられますので、早めに処理を行うのが最善です。
割引手数料がかかる
上記で計算方法をお伝えした通り、大きな額が引かれることはありませんが、割引手数料はかかります。支払期日まで待てば全額がもらえるので、少額の割引手数料だったとしてもデメリットと言えるでしょう。
確認点と注意点は?
商業手形割引を利用する際や、手形を受け取る時の注意点、確認点は次のとおりです。
- 手形に不備がないか
- 裏書に不備がないか
上記の2つは必ず確認を行ってください。1の手形の確認は次のように行ってください。
- 署名や捺印があるか
- 支払期日が適確がどうか
- 収入印紙を貼って消印を行っているか
他にもチェックするべき点はありますが、最低でもこの3つが漏れていないかの確認は行ってください。次に2の裏書に不備がないかですが、裏書きに記載されている裏書人が多い手形は注意しましょう。また、裏書人が連続して書かれている場合も注意してください。
裏書とは、手形の裏面に必要事項を記載したものです。手形は第三者へ譲渡することができます。手形を現金化すると手形割引料が発生しますが、受け取った手形を使って第三者へ譲渡すると、手数料が発生しません。
【まとめ】商業手形割引は難しくない!
「手形」や「商業」と聞くと難しく思ってしまい手が出しにくいですが、商業手形割引はメリットがあります。融資よりも安く、審査も簡単です。
- 商業手形割引は担保代わりにして現金を先に受け取れる
- 手形割引料(手数料)は高くない
- 融資よりも商業手形割引の方が簡単
- 買い戻しリスクを確認うえ検討する
- 手形、裏書に不備がないか確認する
今回の記事をまとめると上記のような結果になります。商業手形割引を理解するための参考になれば幸いです。