1989年に消費税の税率が初めて導入され、その後、導入当初の3%、1997年の5%、2014年の8%、2019年の10%と段階的に引き上げられてきました。
この度重なる税率の引き上げにより、事業者の納付額が大きな意味を持つようになっています。
このことが歴代の選挙で繰り返し取り上げられたことは、消費税に対する国民の関心が相当高いことを示しています。
そこで、今回は、不動産においての消費税について、留意すべき点や消費税がかかる条件などを詳しく解説していきます!
そもそも消費税とは何か
日本では、商品とサービスの購入取引において、消費税の課税が義務付けられています。
この税金は消費者の責任ですが、実際には事業者が国に納めているのです。
このように、義務者と義務者が異なる課税形態を間接税といいます。
資産の移転、立替、役務の提供など、幅広い活動が対象となっています。
不動産収入における消費税は課税されない?
消費税法上、取引は「課税取引」「非課税取引」「非課税取引(税率0%)」の4つに分類されます。
非課税取引の中には、1991年に政策的配慮から追加された住宅ローンが含まれます。
また、法人が従業員に物件を貸す場合も非課税の住宅ローンに該当しますが、貸付期間が1カ月未満であったり、旅館業法に規定する貸付期間であったりする場合は、この限りではありません。
礼金や共益費は非課税となっている
礼金、共益費、管理費、更新料などの住宅ローン関連手数料は、賃貸料に付随して通常やむを得ないと認められるものであれば非課税とされ、これも免除されます。
ただし、賃貸料と同時であっても、冷暖房や給湯の使用料に該当する場合は、消費税の課税対象となります。
不動産のオーナーで消費税がかかる条件とは?
事務所やお店を借りているとき
住居の取得は課税対象にはなりませんが、仕事場や店舗の賃貸は課税事業となります。
小規模な自宅兼事務所や時間貸し事務所も、事務所や店舗と同様に課税事業とみなされます。
民間の住居の供与も同様です。
駐車場を借りているとき
駐車場を借りる場合、課税される場合と非課税になる場合があります。
駐車場として利用する空き地の場合、土地は減らないので、通常は取得しても非課税となります。
しかし、その土地に駐車場としての設備、例えばアスファルトや砂利などを敷き詰め、賃貸する場合は、非課税となります。
しかし、その土地に駐車場としての設備(アスファルトや砂利など)を施して賃貸した場合は、課税対象となることが分かっています。
しかし、住宅に駐車場が併設されており、両者が一緒に貸し出されている場合は、課税されません。
ただし、1戸あたり1台以上の駐車スペースを提供し、住宅の家賃とは別に駐車料金を徴収しないことが免税の条件となります。
前年の課税した上での売上高が1,000万をオーバーしたとき
消費税法では、消費税の納税義務のある事業者を課税事業者、納税義務のない事業者を免税事業者と定めています。
課税事業者になるかどうかの判断は、前年度の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで行われます。
ここでいう「課税売上高」とは、過去1年間に行われた課税取引のうち、収入を得ることができた金額全体を指します。
したがって、初年度の課税売上高が1,000万円を超える場合には、翌年2021年から課税事業者に該当することになります。
従って、2021年1月1日からの取引は消費税の課税対象となります。2021年に課税事業者になるかどうか、疑問が残る場合は、2021年の課税売上高を確認してください。
法人の場合は、前々年の課税した上での売上高が1,000万をオーバーしたとき
法人については、暦年ではなく、前々事業年度によって課税事業者の判定が行われます。
例えば、3月決算の会社が1年決算の場合、2011年3月期(2008年4月1日~2021年3月31日)の課税売上高が1000万円を超えると、2期後の2020年3月期(2020年4月1日~2021年3月31日)から課税事業者となります。
また、2020年4月1日以降に発生する取引については、消費税が課される可能性があります。
課税事業者選択届書を提出している
消費税の課税事業者になろうとする事業者は、届出期限内に課税事業者選択届出書を税務署長に提出し、課税事業者となることが可能です。一般に、課税事業者になるのは、消費税の還付を受けるためです。
この還付とは、払いすぎた税金を返済することです。
消費税の納税額は、原則として、事業者が一定期間内に課税売上高に対して納付した消費税の総額から、支払義務または取得した資源に課された消費税の累計額を控除して算出します。
消費税法では、費用にかかる消費税を「課税仕入れ等」といい、取得した消費税から「課税仕入れ等」を差し引く手法を「仕入れにかかる消費税額控除」と呼んでいます。
課税仕入れ等の控除額が積算された消費税額より多ければ、消費税が還付されることになります。
しかし、消費税法では、消費税の還付を受けられるのは課税事業者だけであることを明確にしています。
そのため、高額な投資計画を持つ企業の中には、その投資が実現した事業年度の税金の還付を受けるために、課税事業者になることを選択する企業もあります。
届出の状況によっては消費税に注意する必要がある
消費税については、常に届出状況を把握しておくことが重要です。
課税事業者となるためには、課税事業者選択届出書を提出する必要があります。
この選択を放棄する場合は、「課税事業者選択不適用届出書」を提出する必要があります。
また、簡易課税制度を選択する場合は、簡易課税制度選択届出書、選択を破棄する場合は、簡易課税制度選択不適用届出書を提示する必要があります。
これらの書類はすべて、その選択をしようとする期間の開始日の前日までに提出する必要があるのです。
例えば、2021年分の簡易課税制度の選択を破棄する場合は、2020年12月31日までに届出書を提出する必要があります。
また、簡易課税制度を選択した年に支払った消費税は、税額控除の対象とならないことに留意してください。
年の途中で簡易課税制度を選択したことに気づいても、消費税の還付を受けるには手遅れになってしまいます。従って、消費税の申告状況を常に把握することが最も重要です。
また、税理士に相談し、自分の投資計画に適した課税状況であることを確認するようにしましょう。
不動産を売却した場合は消費税に気をつける
一般に、土地や建造物などの有形固定資産の価値は相当なものです。
土地の取得には消費税がかかりませんが、建物の購入は課税対象となります。従って、例えば賃貸マンションの売買代金が1,000万円を超える場合は、消費税の課税を考慮する必要があります。
また、消費税に関する取引の課税状況は、前年の課税売上高を基準として判断されます。
例えるなら、2021年に2000万円のマンションを購入した人は2021年の課税売上高が1000万円以上であれば、2021年に売却したマンションの収益に消費税がかかることになります。
これに対して、2021年の課税売上高が1,000万円未満であれば、その人が課税事務に関する正式な申告書を発行しない限り、アパートの売却による2,000万円の利回りに消費税はかかりません。
さらに、2021年の課税売上高が1,000万円以上であれば、2023年に消費税の課税事業者に区分されることになります。この場合、2023年の課税売上高にかかわらず、課税売上高が存在する限り、消費税の申告と納税が必要となります。
【まとめ】税務の専門家に相談してみることもおすすめ!
今回は不動産の賃貸に関する消費税について解説してきました。
消費税法は、当初は基本的な税制でしたが、税率が高くなり、さまざまな税率が適用されるようになり、複雑化する傾向が続いています。
また、選択した課税方式の届出により、納税額が大きく変わるため、毎年見直す必要があることがわかりますね。
投資目的によって納税額や事業運営にどのような影響を与えるか、税務の専門家に相談されることをおすすめします。