会社の福利厚生の一環としてよく耳にする借り上げ社宅。
借り上げ社宅は法人(会社)が賃貸物件の契約を行っています。
個人事業主が自宅兼事務所として物件を借りる際にも、法人契約はおすすめです。
今回の記事ではそんな賃貸物件の法人契約について解説します。
法人契約のメリット・デメリットも紹介します。
ぜひご覧ください。
賃貸物件を法人契約できる?
法人(会社)名義で賃貸住宅を契約して入居することは、基本的には可能です。
賃貸物件の法人契約は、大きく2つのパターンに分けることができます。
以下で詳しく説明していきます。
賃貸物件の法人契約とは
賃貸物件の法人契約には
- 借り上げ社宅のように法人が契約者となって従業員が入居するケース
- 法人が事業用物件(あるいは事務所兼自宅)として借りるケース
の2パターンがあります。
基本的に、個人よりも法人の方が賃貸の審査に通りやすいとされています。
特に大手や有名企業のような社会的に知名度がある法人であれば、家賃を必ず払ってくれるという信頼感があるからです。
賃貸物件の法人契約を断られる場合
もちろん全ての物件で法人契約を結べるわけではありません。
どのような場合に法人契約を断られるのでしょうか。
設立したばかりの法人や、赤字が続く法人の場合、利益が出ず家賃未払いになる可能性が高く、法人契約を断られる可能性があります。
また、住居自体が事業用物件ではない場合、事務所として借りるのを断られるケースがあります。
事業用として使うことで、通常よりも部屋の損傷が激しくなったり、人の出入りが多くなることで、他の住民とのトラブルになったりする可能性があるためです。
また大手であっても以下のようなトラブルがあります。
- 物件の保証会社を利用してもらえない…指定の保証会社ではなく連帯保証人制度を利用することが多く、家賃滞納のリスクが高くなる
- 法人の規約が多く、トラブルに…大手の借り上げ社宅では「礼金は〇円まで」などの社内規約が多く、契約を結ぶ段階になって規約漏れがありキャンセルになることがあります。
また、法人を通して契約するため、手続きに時間がかかることもあります。
そのため、絶対に法人契約だから賃貸契約できる!とは言い切れません。
- 物件探しの段階で法人契約であることを説明しておく
- 社内の規約を確認しておく
この項目をきちんと確認して、仲介会社に伝えておきましょう。
賃貸物件を法人で借りることのメリット
それではわざわざ賃貸物件を法人で借りることに、何かメリットはあるのでしょうか。
審査に通りやすい
上記でも説明した通り、法人の場合社会的信用が高いため審査に通りやすくなります。
大手企業は審査に通りやすいですが、
- 経営状態がしっかりした会社
- 長期経営している会社
は、大手ではなくとも審査に通りやすいと言われています。
逆に、スタートアップなどの設立間もない法人や、赤字が続いている会社は審査に落ちる可能性があります。
家賃が抑えられる
事務所兼自宅で物件を借りた場合、1件分の家賃で済むため家賃にかかるお金が抑えられます。
移動しなくていいため、交通費の負担もありません。
また、法人が契約者となって従業員が入居するケースでは、従業員数に合わせて複数戸を借り上げる場合、貸主側から家賃を下げるなどの特典を提案されることもあります。
賃貸物件を法人で借りることのデメリット
逆に、賃貸物件を法人で借りる際、何かデメリットはあるのでしょうか。
必要書類が多い
法人契約で賃貸物件を借りる際、個人契約と異なり必要な書類が多くなります。
具体的には以下の提出を求められることがあります。
(法人の規模によっては必要がないものもあります)
- 会社概要書
- 会社謄本
- 会社の決算報告書の写し
- 法人の印鑑証明書
- 入居者の住民票
- 入居者の社員証
- 納税証明書(自宅兼事務所の場合)
揃えるのに時間がかかるため、前もって準備しておきましょう。
敷金が高くなる
これは自宅兼事務所として物件の法人契約を結んだ際によくあるデメリットです。
上記でも説明した通り、自宅兼事務所になると、人の出入りが激しくなり部屋の損傷が早くなることがあります。
また飲食業を営む場合熱や匂いがこもりやすいため、どうしても部屋が傷みやすくなります。
そのため、通常の物件より原状回復やクリーニング費用がかかるのです。
部屋の原状回復やクリーニング費用は敷金から捻出されるため、どうしても事業用物件の敷金が高くなる傾向があります。
ホームページやSNSなどに住所を記載できない
これも自宅兼事務所の場合に多いトラブルです。
他の住民に迷惑をかけるからという理由で事務所の住所公開を禁止している物件があります。
業種によっては、インターネット上に住所情報が記載できないことで経営に打撃を受ける事もあり得ます。
必ず契約前に確認しておきましょう。
法人で賃貸契約を行う手順
法人の賃貸契約も、個人の賃貸契約も流れはほとんど変わりません。
借り上げ社宅のように法人が契約者となって従業員が入居するケースを例にします。
法人契約だからといって特別なことをする必要はなく、基本的には個人契約と同じように
- 申し込み
- 書類の提出
- 入居審査
- 契約・初期費用の入金
という流れですすみます。
個人契約と違う所は、入居する社員個人でこの契約を進めていくのではなく、法人の総務担当者が進めていく部分がほとんどであるということです。
大きな企業の場合、社宅代行業者という不動産契約の手続きを代行する業者に委託している場合もあります。
最初の申し込みのみ社員個人が行い、その後は法人の担当が行うという形が大半です。
法人によってはその他の部分も社員自身が行う場合があります。
申込む前に、会社の担当部署に連絡し申し込み方法を確認しておきましょう。
また法人契約の場合書類を郵送して契約のやり取りを行うことが多いため、個人契約するよりも時間がかかります。
余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
賃貸物件を法人契約する際の注意点
法人が契約者となって従業員が入居するケースで、注意すべきことを説明します。
法人契約の際の社宅規定の内容を確認すること
法人によっては契約できる物件の細かい条件が決まっていて、それから外れると契約できないことがあります。
例えば
- 賃料や敷金礼金に上限がある
- 借りられる物件のエリアが決まっている
- 築年数・延べ床面積、構造等が決まっている
- 物件を探す仲介業者が決まっている
などの要件があります。
引っ越しを急いでいるのに、せっかく申し込んだ物件が社内規定から外れていて借りられなかった…とならないように、きちんと規定を確認しておきましょう。
定期借家契約の物件は大丈夫か
定期借家契約(契約期間が最初から決められている賃貸契約)の物件は規約で借りられないという法人が多いです。
必ず確認しましょう。
連帯保証人や保証会社への加入が必要か
個人契約の時と同様、家賃保証のために保証会社への加入を求められることがあります。
法人では一般的に、入居者本人か会社の代表取締役を連帯保証人にするケースが多いとされています。
物件によっては、保証会社に加入しないと借りられない場合もあるため、必ず法人に確認しましょう。
【まとめ】
賃貸の法人契約には法人が契約者となって従業員が入居するケース、法人が事業用物件(あるいは事務所兼自宅)として借りるケースの2パターンがあります。
どちらのパターンもメリットはありますが、デメリットや入居を断られる場合があります。
しっかり仲介会社や法人側と相談・確認してから、契約手続きを進めましょう。