身寄りがない場合、死亡したら持ち家はどうなるんだろう…
そう悩む方のために、この記事では「身寄りがない人が死亡した際、持ち家や財産がどうなるか」を解説します。
持ち家や財産を知人に渡す方法についても紹介します。
ぜひご覧ください。
身寄りのない人が死亡したら持ち家は国庫に入る?
身寄りのない人が死亡した場合、遺言の有無や本当に相続人がいないかなどの詳細な調査や手続きが進められます。
遺言がなく相続人もいないことが判明した場合、地方自治体や裁判所によって、家や資産の処分が決められるのです。
そして相続人がいなければ最終的に国庫に帰属し、国の財源として活用されることになります。
国庫帰属の流れ
それでは身寄りのない人の財産はどうやって国庫に帰属されるのでしょう。
国庫帰属が決定するまでの流れを記載していきます。
①法定相続人の調査
民法に基づいて法定相続人が調査されます。
調査の結果
- 法定相続人が家系にいない
- 法定相続人はいるが相続放棄した
- 法定相続人はいるが欠格・排除などにより、相続が認められない
となれば「法定相続人はいない」(相続人不存在)とみなされ次の段階へすすみます。
詳細を詳しく説明していきます。
〇法定相続人とは
法定相続人は、原則配偶者、子供、父母、兄弟姉妹となります。
すでに対象者が亡くなっている場合、その子供が相続権を持ちます。(代襲相続)
もしもこれらの相続人が存在すれば、その人たちが財産を相続します。
しかし代襲相続できる相続人すらいない場合、法定相続人がいないとみなされます。
〇相続放棄
法定相続人となる対象が存在してもその対象が持ち家や財産を相続放棄した場合、法定相続人がいないということになります。
- 遠方だったり疎遠で持ち家をもらっても困る
- 故人に借金があるため(相続すると遺産だけではなく借金も引継ぐことになる)
などの理由で相続放棄することが多いようです。
〇欠格・排除
法定相続人の対象となる人物がいても、欠格・排除に該当する場合は法定相続人であるとは認められません。
欠格・排除とは、故人(被相続人)へ侮辱や脅迫などを行った法定相続人に対し相続権を与えず除外するというものです。
②遺言の有無の確認
故人が遺言を残しているかどうかも確認されます。
遺言書によって指定された相続人がいない場合、次のステップに進みます。
③特別縁故者の有無の確認
相続人不存在の場合、被相続人の特別縁故者に家や遺産を受け取る権利が与えられます。
特別縁故者とは
- 被相続人と生計を同じくしていた者…婚姻届けが未提出である所謂内縁の配偶者、事実上の養子など
- 被相続人の療養看護を行っていた人…被相続人の看護や介護をしていた人(業務として報酬を得ていた人は除く)
- 被相続人と特別な縁故があった人…遺産について口約束をされていた、師弟関係など密接な関係があった
のような人々を指します。
④財産管理人の選任
故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所が財産管理人を選任します。
財産管理人は相続財産の管理や精算を行います。
相続財産管理人は
- 故人にお金を貸していた債権者
- 遺言での財産受取人
- 特別縁故者
- 検察官
が家庭裁判所に申立てます。
⑤官報での公告
家庭裁判所は被相続人の死亡を官報で2カ月間公告し、相続人がいれば名乗り出るよう求めます。
⑥債権申立ての公告
相続人が現れなかった場合、その他の債権者や財産をもらう予定だった人がいないか公告します。
期限は2ヶ月以上です。
⑦相続人捜索の公告
これでも相続人が見つからない場合、さらに相続人捜索の公告を続けます。
この期限は6ヶ月以上で、この三回の広告でも相続人が見つからない場合、相続人不存在が確定します。
⑧特別縁故者へ財産分与の申立て
相続人不存在が確定した後、3ヶ月以内であれば特別縁故者が遺産をもらうことができます。
ただし特別縁故者が家庭裁判所に申立てをし、認められることが条件となります。
3ヶ月以内に申立てが無いか、もしくは申立てが却下された場合、故人の遺産は財産管理人への報酬を差し引いて国庫に帰属することになります。
また、債権者や受遺者、特別縁故者に相続したものの、まだ財産が余る場合、残りも上記と同様になります。
国庫帰属の手続き方法
残した財産の国家帰属が決まった後、一体どのような手続きを行うのでしょうか。
①相続財産管理人の報酬
相続財産管理人は、遺産の中から報酬を受け取ります。
これで国家帰属を行う財産の額が確定しました。
そして相続財産管理人はこの財産を国庫に帰属させる手続きをとることになります。
②遺産の国家帰属手続き
国庫引継の手続きは財産が現金なのか不動産なのかによって引き渡し場所が異なります。
- 不動産や船舶・航空機など→財務局長
- 現金・金銭債権など→家庭裁判所
相続財産は、ほとんど現金に換えて国庫に帰属させることが一般的です。
現金を国庫に帰属させる場合、様々な手続きを経て、裁判所債権管理官の指定する口座に納付します。
不動産を国庫に帰属させる場合は、所轄財務局長と打ち合わせを行い引き継ぎをしてもらいます。
身寄りのない人が死亡後に持ち家を知人に譲れる?
身寄りのない人が死亡後に知人に持ち家を譲ることは、生前に準備を行っている場合は可能です。
ただし準備を行っていない場合、特別縁故者や債権者ではない限り家を受け取るのは難しいでしょう。
それではどんな準備が必要なのでしょうか。
遺言書の作成
遺言書を書いておくことで、死亡後の遺品や財産の扱いを指定することができます。
遺言書を作成しておくと亡くなったときに遺言書の内容が優先されるため、知人や持ち家を譲ったり寄付することが可能です。
一般的に利用されるのは
- 自筆証書遺言(手書きして作る遺言書。法務局に預けることも可能)
- 公正証書遺言(公証役場で公証人に作成してもらう遺言書)
の二つです。
ただし遺言書は民法で定められた方式で作成する必要があります。
要件を満たしていないと無効になる恐れがあるので、弁護士などの専門家に相談したうえで作成しましょう。
死因贈与契約
死因贈与契約とは、贈与する人が死亡すると効力が生じる契約です。
死因贈与の場合には契約を結ぶことになるため、確実に知人に持ち家を譲ることができます。
注意点としては、相続する場合相続税や不動産取得税など税金がかかることです。
あらかじめ贈与する知人の負担にならないように相談しておくのが望ましいでしょう。
身寄りがない人が生前に準備すべきこと
身寄りがない人が生前に行っておくこととしては
- 成年後見制度の利用
- 死後事務委任契約を結ぶ
- 遺言書の作成
があります。
準備に費用はかかりますが、判断能力がなくなったり死亡した後も希望通りに手続きが進むというメリットがあります。
上記で説明した遺言書の作成以外の二つについて解説します。
成年後見制度の利用
成年後見制度とは、認知症などで判断能力がなくなった人の財産管理を支援するために後見人をつける制度です。
成年後見制度には、以下の二つがあります
- 法定後見制度…認知症になった後、家族等が家庭裁判所に申し立てて後見人を選んでもらうもの
- 任意後見制度…認知症になる前に自らが後見人に指定する
身寄りのない人はこの任意後見制度を利用して先に後見人を選ぶのがおすすめです。
身寄りのない人は健康なうちに後見人を指定しておきましょう。
ただし、任意後見人に委任できるのは生前の財産管理だけです。
死後の様々な手続きに対しては以下の死後事務委任契約を結びましょう。
死後事務委任契約
死後に生じる葬儀業者の手配や役所への届出などを行ってほしい場合、死後事務委任契約を結んでおく必要があります。
成年後見制度とセットで契約するのもいいでしょう。
【まとめ】
身寄りがない人が死亡すると、生前の準備がなければ財産や持ち家は国の財産となります。
血がつながっていない人や、特定の団体などに財産を渡したい場合は自分で生前から準備を行っておきましょう。