個人事業主としての事業運営には多くの費用が伴いますが、その中でも家賃は大きな出費の一つです。
しかし、確定申告で経費として計上することで、税金の負担を軽くすることができます。
この記事では、個人事業主が家賃を経費として計上する方法や注意点について詳しく解説していきます。
自宅と事務所を兼ねている場合の経費の計上方法や、経費の計算の際によく聞く家事按分とは何なのかについても紹介します。
起業したばかりで確定申告が不安な方も、ぜひ参考にしてみてください。
個人事業主の家賃は経費で落とせる!
個人事業主は、事業で使用する店舗やオフィスの家賃を必要経費として計上することが原則として認められています。
ただし、家賃全てが経費として計上できるわけではありません。
例えば自宅で仕事をしている場合、プライベートスペースと事業スペースの区別を明確にし、事業用に使用されている部分を経費として計上する必要があります。
具体的には、使用面積や使用時間に基づいて事業用の割合を計算し、その割合に応じて家賃を経費として計上します。
このプライベートにおける生活費と事業にかかる費用を区別し、要件に従って事業で使用した費用を算出することを家事按分といいます。
家事按分にははっきりとした計算式はありません。
しかし家事按分した費用を経費に計上するためのルールが定められており、その費用が事業に必要であるというしっかりとした根拠を提示しないと、確定申告で経費としては認められないのです。
また、家事按分は電気・ガス・水道代や通信費等家賃以外にかかる費用にも適用可能です。
今回は家賃や駐車場代について、ケースごとにどのように経費を計算していくかを説明していきます。
個人事業主の駐車場代の費用も家賃として経費にできるのか?
個人事業主としての活動を行う際、事務所やオフィスの家賃だけでなく、駐車場代に使った費用も経費として計上することが可能です。
更に自動車の購入費用、ガソリン代や自動車税、車検代も経費計上が可能です。
月極駐車場代を仕訳する際の勘定科目は「地代家賃」となります。
また、駐車場や自動車を事業とプライベート両方で使用している場合、家賃と同様に家事按分が必要になります。
これらの費用を家事按分する際には、使用日数から算出します。
駐車場代の按分計算を行う場合、事業の場合とプライベートの場合の利用時間や頻度を詳細に日報に記録します。
駐車場代の領収書を合わせて残すことで、税務調査で指摘されないよう家事按分の根拠を残すことが重要です。
また、業務で利用したコインパーキングは原則「旅費交通」として経費に計上できます。
ただし同じ確定申告でも、青色申告と白色申告では、按分して経費計上できるかどうかの条件が異なります。
青色申告は、用途が事業用であれば特に制限なく経費計上できます。
それに対し白色申告では条件が厳しく、支出のうち業務使用の割合が50%を超えないと経費計上の対象になりません。
使用する駐車場の種類や申告書の種類によって経費計上の仕方が変わるため、注意して適切な経費計上を行いましょう。
自宅と事務所を兼ねている場合の按分経費計上方法
ここまでの説明で、プライベートと事業の両方で使用される空間やサービスの費用は、それぞれの割合で分けて計上する必要があるということを理解していただけたと思います。
個人事業主が自宅と会社を兼ねて使用している場合も、家賃や光熱費などを経費に計上するためにはやはり家事按分が必要となります。
ここからは、
・自宅兼事務所が賃貸の場合
・自宅兼事務所が持ち家の場合
のそれぞれのケースの対応について説明します。
自宅兼事務所が賃貸の場合
自宅兼事務所が賃貸の場合、家賃を経費にすることは可能です。
もちろん、家賃全額は経費にはできず、事業に使用している一部のみとなります。
家賃の内事業に必要だと認められる金額のみが経費となるため、家事按分してその金額を算出します。
仕訳する際の勘定科目は家事関連費となります。
算出方法として一般的なものは、面積や時間から按分割合を求める方法です。
簡単な例を用いて説明しましょう。
●面積から按分割合を求める方法
例:家賃が10万円で、自宅全体の面積が100平方メートル、事務所として使用する部分が20平方メートルの場合、
按分割合は20平方メートル÷100平方メートル=0.2(約20%)
家賃の内業務に必要な額は10万円 × 20% = 2万円
となり、按分割合は20%で、家賃の内2万円を経費にできます。
部屋の図面などを参考にして、きちんと面積を計算しておきましょう。
税務調査の際に、按分割合の根拠について明確に示す必要があるためです。
●時間から按分割合を求める方法
例:家賃が10万円で自宅での業務時間が1日8時間、週5日間の場合
1週間の稼働時間は8時間 × 5日 = 40時間
1週間を時間換算すると24時間 × 7日間 = 168時間
按分割合は40時間 ÷ 168時間 = 0.23…(約20%)
家賃の内業務に必要な額は10万円×20%=2万円
となり、按分割合は20%で、家賃の内2万円を経費にできます。
こちらは、ワンルームや部屋数が少ない物件を自宅兼事務所にしている事業者向けの算出方法で、光熱費や通信費などを家事按分する際にも使用します。
この二つの内どちらかの方法で、按分割合を算出しましょう。
自宅兼事務所が持ち家の場合
持ち家が自宅兼事務所の場合も、家事按分して経費に計上することが可能です。
ただし持ち家の場合は、家の購入金や住宅ローンの支払い金を経費に計上することはできません。
持ち家の場合経費にできるのは
- 建物の減価償却費
- 固定資産税
- 住宅ローンの利息
- 火災保険料・地震保険料
です。
これらを、プライベート用と事業用に分け、賃貸の家賃と同様に家事按分して算出した金額を経費にします。
注意点としては、事業分の割合が規定を越えると住宅ローンの控除が受けられなくなる可能性があるということです。
住宅ローン控除には
- 居住用の床面積が50%以上で控除が利用可能
- 居住用の床面積が90%以上であれば全額控除可能
という規定があります
つまり全額控除する場合、事業用の床面積は10%以下となるのです。
住宅ローン控除と経費のバランスを考えて家事按分を行いましょう。
自宅と事務所が別の場合の経費計上方法
自宅と事務所が別の場合、事務所の家賃は原則全額経費に計上することが可能で、家事按分は必要ありません。
勘定科目は地代家賃となります。
ただし、親族から事業用の物件を借りている場合、注意が必要です。
生計を一にする親族から物件を借りていて、その親族に家賃を支払っている場合、経費にはできません。
ただし、その親族を経由して第三者に家賃を払っている場合は経費に計上することが可能です。
逆に、生計を一にしていない親族から物件を借りて家賃も支払う場合は、経費に計上することが可能です。
コワーキングスペースなどを数日使う場合も、経費として計上できます。
ただし、賃貸契約を結んでいるわけではないので、勘定科目は地代家賃ではなく、雑費や会議費などが該当します。
個人事業主が家賃を経費にするときの注意点
家賃を経費として計上する際には、以下のポイントに注意が必要です。
敷金など返金されるものは経費にならない
事業用に物件を借りる際、敷金(保証金)や礼金が発生します。
敷金は、万が一家賃の支払いができなくなった際の担保や、退去後の原状回復のための補修代やクリーニング代として使われるものです。
余った敷金は退去時には返金されることになっています。
敷金のような返金される費用は、原則経費に計上できません。
礼金は返金されないため経費計上できますが、20万円以上の礼金は減価償却する必要があります。
つまり、一度で全額計上するのではなく、数年かけて処理していく形になります。
賃貸借契約書が必要
不動産を経費として計上する際に、会計の根拠として必要なものが賃貸借契約書です。
賃貸借契約書があることで、家賃などの契約条件の根拠や、事業者本人が不動産を借りていることを示すことが可能です。
税務調査や確定申告の際にも必要なものなので、大事に保管して重要な部分はコピーをとっておきましょう。
【まとめ】
経費の計上は、個人事業主の事業運営における大切な要素の一つです。
家事按分して適切に計上することで、節税となり、経営の効率を向上させることが可能となります。
家賃の経費計上には複雑な点も多く、賃貸か持ち家かでも考え方が変わるため、しっかりと確認した上で適切な税務処理を行いましょう。
また確定申告で経費計上する際には、家事按分の割合の明確な根拠となるように、きちんと書類を作成し記録を残しておきましょう。
自分で判断できない場合は、税理士に相談するなどして、専門家のサポートを活用するのも一つの手です。