約束手形と為替手形、商業手形と融通手形の違いを解説!

企業での取引において、手形が使用されることも多いですよね。しかし、手形には複数の種類があります。経営者や個人事業主、企業の経理担当者はその種類を把握して処理しなければいけません。

約束手形と為替手形の違いは、取引をする当事者となる会社数が異なります。また、商業手形と融通手形の違いは、商業手形が商取引に基づいているのに対し、融通手形は資金繰りに使用されるというものです。

それぞれの違いを把握しておかなければ、仕訳での間違いなども発生してしまいますよね。この記事では、日々の取引に重要なそれぞれの手形の種類や資金調達の際の注意点について解説します。

手形とは

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そもそも、手形とはどんなものなのでしょうか。手形と似た支払い方法に「小切手」がありますよね。小切手は今預金残高がある場合に銀行口座から支払える方法です。

小切手を受け取った会社が取引のある銀行へ小切手を持ち込み、現金化させることが可能な仕組みとなっています。

それに対し、手形は今現金がなくても支払期日までに振り出した手形と同額を用意できれば問題ありません。

ただし、手形を受け取った会社が早く現金化したいという場合には、「手形の割引き」によって現金化が可能です。

手形の割引きは期日前に銀行がその手形を買い取る方法で、早く現金化できる点はメリットだといえますが、期日までの利息となる金額が割引きされて支払われます。

手形は便利なものですが、現金化するまで時間がかかるという受け取る側のデメリットもあることから、2026年を目処として廃止される方向で検討されています。

最近はデジタル化が進んでいるという点からも、紙面での有価証券である手形は近年の取引には不向きだという考え方もあります。

2021年に手形を廃止するという検討を経済産業省が発表しましたが、現状では手形を使っている企業は多いですよね。

手形は支払期日になっても現金が当座預金に入っていなければ不渡りになることもあるため、信用がある企業であるということも示しているものです。

手形の種類

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それでは、手形の種類にはどんなものがあるのでしょうか。手形の種類には、主に約束手形と為替手形があります。

この2つの手形では二者間か三者間かという明確な違いがあり、流れも変わってきます。手形の種類ごとの使い方についても知識を深めておきましょう。

また、約束手形だけではなく、商業手形や融通手形というものもあります。一般的に手形と聞くと商取引の目的のために利用する有価証券だというイメージが強いですが、融通取引は商取引が発生していない金融目的のための手形です。

このような形の手形もあるということを覚えておきましょう。

約束手形と為替手形の違い

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そもそも手形とはすぐに現金に変えられるものではありませんが、一定期間が経った後に決められた金額が支払われることを約束した有価証券のことです。そして、約束手形とは紙面に記載された金額が支払われることが約束された手形のことを指しています。

約束手形は2者間の取引で使用されます。約束手形を振り出した側は振出人として代金を支払う側、そして受取人は代金を受け取る側のことです。

また、約束手形の使用方法として裏書というものがあります。裏書では手形の裏面に名前と押印をすることによって、受取人が代金を支払いたい取引先の支払いにその手形を仕様することが可能となる仕組みです。

それに対し、為替手形は第三者を通じて支払われる手形です。つまり、二者ではなく三者で行われる取引となります。

為替手形は振出人が為替手形を発行し、債権を持っている受取人(指図人)ではなく支払人に支払ってもらう方法です。

為替手形を発行するメリットは受取人が手形の代金支払いをする際に必要となる当座預金の口座を持っていなかったり、売掛金の回収が遅れている相手から確実に回収したかったりする場合などに使える点です。

また、仕訳処理などで先に消込処理もできます。ただし、支払人の当座預金口座の預金が支払期日に入っていない場合に不渡りとなる点では約束手形と同じです。

商業手形と融通手形の違い

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商業手形とは、簡単にいえば商取引に基づいて振り出される手形のことです。これは、実手形や真正手形とも呼ばれます。

融通手形は資金繰りのために振り出されるケースが多く、銀行からの借り入れができなくなってしまった企業などが利用するものです。

したがって、融通手形は信用度の高い企業が利用するものではなく、通常は銀行からの借り入れをしなければいけないところ、それができない事情がある企業が利用します。

融通手形を振り出す方法は二つあり、融通する企業が一方的に振り出すことを一方手形、そして双方で発行し合うのが双方手形です。

融通手形の融通者は資金や信用がある企業で、信用がない状態で資金が必要な企業に融資を行うために発行するという仕組みです。

ただし、期日までに返済しなければ融通してくれた会社に請求がいくことになってしまいます。そうなるとさらに信用を落とすことになり、最悪の場合倒産に追い込まれる可能性もあるので注意しながら利用しましょう。

手形貸付で資金調達する流れ

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手形貸付は証書貸付よりも銀行側のメリットも大きい資金調達方法です。具体的には、手形を担保に入れていることから金利が安く、融資のスピードが早い点が魅力となっています。

手形貸付で資金調達をする流れは、借主が約束手形を振り出したうえで貸主へと私、融資を受けるという流れになります。

初回は銀行取引契約書と連帯保証人の保証契約書が必要ですが、2回目以降は融資を受ける企業の署名と捺印のみと、初回よりも簡単に資金調達を行えます。

手形の貸付は長期ではなく原則として1年以内に弁済しなければいけないものです。短期であるという特徴もあわせて覚えておきましょう。

手形貸付で資金調達する際の注意点

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手形貸付は短期の融資であるということのほかにも、注意しなければいけないことがあります。次の2つの注意点を押さえておいてください。

審査に通らない可能性がある

手形貸付は銀行融資のひとつであり、企業の信用度が低いと審査に通らない可能性があります。信用度が高い企業の場合は比較的利用しやすい方法ですが、信用度が低ければ審査に通らず利用ができないケースもあるでしょう。

手形貸付の審査に通るためには、企業の財務状況が見られます。決算書などの書類が必要とされることも少なくないので、資金繰りが普段から厳しい企業は利用できない可能性があるということを把握しておきましょう。

不渡りになるリスクがある

手形貸付では資金を用意できなければ不渡りとなるリスクがあります。銀行からの融資である手形貸付で不渡りとなると、信用を失って取引が継続できなくなる恐れもありますよね。

取引先への支払いができなくなると取引先と継続して取引していくことが難しくなるだけでなく、取引を行った銀行以外の金融機関にも融資を受けられなくなるリスクが発生します。

これは、手形交換所に不渡届が出されるからです。取引のうち2回不渡りとなってしまうと、企業は倒産してしまうので慎重にならなければいけません。

【まとめ】手形の違いや注意点を知って正しく使用することが大切

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手形には商業手形だけでなく融通手形もあるなど複数の種類があり、その種類によって使い方も異なります。どの手形も支払期日までに現金を準備しておかなければいけないということは同じなので、短期の融資だということを理解して使う必要があります。

手形は便利ですが不渡りになるリスクによって会社の倒産危機になることも踏まえ、注意して利用していきましょう。また、今後廃止される可能性が高いということも知識として知っておき、手形が利用できなくなった後の経理処理についても考えておきたいですね。