依然として好調な不動産市場。
とは言え「もっと不動産が安い時まで購入を待った方がいいのでは?」「より高く売れるまで待った方がいい?」と売り買いのタイミングについて迷う方も多いと思います。
そんな時は今後の不動産価格の予測を行う一つの指標として、過去の不動産価格の推移を見るのがおすすめです。
この記事では不動産価格の推移を知る方法や、不動産価格に影響を与える原因について紹介していきます。
2024年以降の不動産の推移についても解説します。
ぜひご覧ください。
不動産価格の推移を知る方法
不動産価格の推移について調べる際に役立つのが、「不動産価格指数」と「公示価格」と呼ばれる二つの指標です。
どちらも国土交通省のホームページから誰でも閲覧することが可能です。
不動産価格指数
不動産価格指数は、不動産価格の動向を示す指標です。
2010年の不動産平均価格を100として他の年の平均価格を換算したもので、国土交通省により毎月公表されています。
この指数は、年間約30万件の不動産取引価格情報を基にして、全国、ブロック別、都市圏別、都道府県別に算出されています。
不動産価格指数は住宅と商業用不動産の2種類に分けられ、住宅用不動産では住宅地、戸建住宅、マンション、商業用不動産では店舗、オフィス、倉庫、それぞれの物件タイプごとに細分化された指数が存在しています。
これにより、国内全体の不動産取引の活発さや価格の長期間の大まかな推移を把握できます。
公示価格
公示地価とは、国土交通省が年に1回、1月1日時点の全国約26,000個の標準地1㎡あたりの地価を調査して公表する土地価格の指標です。
毎年3月に発表され、主に都市計画区域内の土地が対象になります。
公示地価はその土地の評価や土地取引の目安となる重要な指標です。
とはいえ、年に一回しか公表されない数字なので時勢が反映されづらく、実際の取引価格(実勢価格)とは異なることがあります。
国土交通省のホームページでは、自分の知りたい土地の最新の公示価格だけではなく、過去の公示価格も確認可能なため、数年間のその土地の公示価格の推移が分かります。
その他の指標
もっと詳細な土地価格の推移を確認したい時、指標となる数値を二つ例に挙げます。
●都道府県基準地価…都道府県が毎年9月下旬ごろに公表する土地の価格です。
公示地価同様、土地取引の目安として利用されます。
都道府県基準地価は公示地価と異なり都市計画区域以外も含むため、より特定の地域の価格が分かることが特徴です。
●路線価…路線価とは、国土交通省が公示する道路に面した1㎡あたりの土地価格です。
主に相続税や贈与税を計算する際の基準となります。
不動産価格・市場に影響を与える要因
上記の指標でも分かる通り、ここ10年以上不動産価格は高騰しています。
こういった不動産価格に影響を与えている要因は一体何なのでしょうか。
低金利政策
この不動産価格の高騰に一番関連しているのが、2013年から日本銀行が行っている低金利政策だと言われています。
事実、不動産価格指数は2013年から上向きになっています。
低金利政策と不動産市場にはどういった関係があるのでしょう。
不動産を購入するのに一番重要なのは金融機関からの融資です。
金利が低いと、住宅ローンを組みやすくなります。
そうすると不動産を購入する層が増え、不動産の需要が高まることで価格が高騰するのです。
円安
2022年以降から続く円安により、海外投資家による日本の不動産への投資が増加しています。
以前から首都圏の利便性のいいマンションなどが海外投資家から人気でしたが、円安になったことでより一層需要が高まっています。
また円安が続けば
・建築資材の値上がり
・外国人観光客が増加し、宿泊施設の需要も増える
という状況が見込まれるため、不動産価格は上昇傾向が続くと予測されています。
国際情勢
2022年、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まりました。
これにより、石油などのエネルギー原料、木材を始めとする建築資材の輸入が困難になり、材料費が高騰し、住宅価格にも影響を与えています。
また新築物件が高騰することで、需要が増加したのが中古住宅です。
そのため中古住宅も値上がりし、不動産平均価格が上昇しているのです。
新型コロナウイルス
新型コロナウイルス感染症の流行初期である2020年、不動産価格も一時的に影響を受けましたがすぐに回復。
コロナ禍で在宅勤務が一般的になり、通勤時間を気にする必要がなくなる人が増え、価格が安い郊外の物件への需要が増加しました。
イベント
東京五輪開催に当たって、不動産開発やインフラ整備が行われた結果、東京のオリンピック開催エリアの不動産価格が上昇しました。
2023年はどのような変化が起きた?
2023年は不動産業界にとってどのような年だったのでしょうか。
以下で解説していきます。
低金利方針の終了
日本銀行は2022年末、それまでと一転し、低金利政策を緩和する方針を打ち出しました。
2023年7月に実質的な金利上限を1.0%まで引き上げたことにより、2023年11月時点で金利が0.9%以上にまで上昇しました。
その結果住宅ローンの固定金利が緩やかに上がっています。
不動産の売り上げは前年から続いて好調
参照:不動産価格指数(令和5年12月・令和5年第4四半期分)
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001734313.pdf
2022年末、日本銀行の金融政策修正により、住宅ローン等の金利も上昇に転じ、その悪影響が予想されていましたが、不動産市場は好調でした。
中古マンションや中古一戸建ても、新築物件に手が届かない層に人気です。
3月に発表された令和6年地価公示でも、全国平均において2023年1年間で全用途平均・住宅地・商業地全て上昇しています。
三大都市圏や地方圏の住宅地においても3年連続、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも上昇し、都市圏だけではなく地方においても地価が上昇しています。
しいて言うならば、戸建て住宅の価格が伸び悩んでいる程度です。
これは、リモートワークなどの普及で郊外に家を購入する流れが一旦落ち着いたためだと考えられます。
不動産価格の今後の推移
それでは2024年以降、高騰している不動産価格はどうなるのでしょうか。
金利は上昇するもののわずか
低金利政策の緩和に引き続き、日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、金利を上げることを決定しました。
一般的に金利が上がるとローンが組みにくくなるため、今回の決定により不動産価格は下落する恐れがあります。
しかし、大きく金利は上がらないだろうという意見が一般的です。
なぜなのでしょうか。
これは、国債が関係しています。
住宅ローンの固定金利は国債の利回りと連動しているため、金利が上がると国債の利回りが上がり、その分日本政府の負担が増えてしまいます。
そのため、国債に影響が出ない程度にしか、金利を上げられないのです。
変動金利は国債には影響しませんが、変動金利を上げると日本銀行が民間の銀行に払う利払いが増加し、日本銀行の収益自体が悪化する恐れがあります。
日本銀行は、国債の利回りを下げるための低金利政策の一環として、日本銀行自身が国債を高く買うという方法を採用しています(イールドカーブコントロール)。
日本銀行の収益が悪化すると国債を買うことが難しくなるため、変動金利も簡単に上げることができないのです。
これらの理由から、少なくとも2024年には固定金利も変動金利も大きな上昇はないと言われています。
円安による不動産の高騰は続きそう
ロシアのウクライナ進行が続いている上に、2023年10月にイスラエル紛争も開始。
現在以上に物価が上昇する可能性があります。
アメリカを始めとする諸外国では、物価を下げるために金利を上げています。
しかし、日本は前述の様に簡単に金利を上げられません。
投資は高い金利の通貨で行うのが有利であるため、円が売却され円安となっているのです。
円安になると建物の資材などを含む輸入品は高くなりますが、こういった理由で簡単に円安は解消できず、建築費が嵩み不動産価格が上昇する要因となります。
そのため、2023年度と同じように不動産価格の高騰は続くと見られています。
大阪万博でバブルが起きる?!
東京オリンピックの時と同様に、2025年開催に万博が開催予定の大阪でも万博バブルが起きると予想されています。
現在大阪は都市開発やインフラ整備に力を入れており、外資系ホテルの参入も決まっていることもあって、地価の上昇が見込まれています。
また、大量の資材や人手が大阪万博に集中するため、日本国内の建築工事に必要な資材や人手が不足し、結果として建築費が高騰する可能性もあります。
【まとめ】
不動産価格の推移がよく分かる指標として「不動産価格指数」と「公示価格」の二つが挙げられます。
その指標でも分かるように、現在不動産価格は高騰しています。
現在不動産価格に影響を与えているのは、低金利政策・円安・国際情勢・コロナウイルス・オリンピックなどの大規模イベントです。
2023年は変わらず不動産価格は高騰しましたが、低金利政策の緩和が行われ、金利が上がりました。
2024年にはマイナス金利政策を解除したものの、国債の利回りを下げるために急激に金利を上げることにはならないであろうというのが大半の見方です。
また、そういった理由で低金利が続くことやウクライナ進行に続きイスラエル紛争も始まったこと、大阪万博が控えていることなどにより、2024年も不動産価格は高騰し続けると考えられています。
このように不動産価格は常に社会情勢や金融政策の影響を受けています。
不動産を売買する際は、価格の推移や相場などの情報をしっかり調査して臨むのがポイントです。
不動産会社に相談したり査定を依頼したりして、専門家を活用するのもおすすめです。