不動産を売却する際、多くの書類が必要になります。
中には書類の取得に時間がかかるものや、確定申告のように提出期限が決まっているものも。
今回の記事では、不動産売却時に必要になる書類について解説します。
不動産会社に売却依頼を行う際の必要書類
以下は、必要になる書類を不動産の種類ごとに一覧表にしたものとその書類の解説となっています。
これらの必要書類は依頼する前に揃える必要はありませんが、種類が多いため集めるのに時間がかかります。
不動産会社の担当者から実際に書類に関する説明があるまでには集めておきましょう。
マンション | 一戸建て | 土地 | |
登記簿謄本または登記事項証明書 | ○ | ○ | ○ |
売買契約書 | ○ | ○ | ○ |
物件購入時の重要事項説明書 | ○ | ○ | ○ |
登記済権利書または登記識別情報 | ○ | ○ | ○ |
土地測量図・境界確認書 | – | ○ | ○ |
固定資産税納税通知書および固定資産税評価証明書 | ○ | ○ | ○ |
物件の図面、設備の仕様書 | ○ | ○ | – |
建築確認済証および検査済証 | – | ○ | – |
建築設計図書・工事記録書 | △ | – | △ |
マンションの管理規約または使用細則、マンション維持費関連書類 | ○ | – | – |
耐震診断報告書とアスベスト使用調査報告書 | △ | △ | – |
登記簿謄本、もしくは、登記事項証明書
不動産の登記事項や権利関係について記載されたもので、どちらも同じ内容です。
登記簿謄本は法務局で取得できる登記簿の写しです。
電子データとして登録されている登記簿を印刷し証明書として発行したものが登記事項証明書となります。
物件購入時の売買契約書
以前の不動産の持ち主と結んだ売買契約書には、契約日や売買代金、物件の状況などについて記載されています。
不動産を売却する場合にも譲渡所得や税金の計算のため、購入した際の売買契約書が必要になります。
物件購入時の重要事項説明書
重要事項説明書には物件の詳しい内容、取引条件、周囲の環境などの告知事項など、売買契約するに当たって買主に確認すべき事項が記載されています。
具体例を挙げると、私道の負担、土地周辺の環境や下水処理場などの施設の有無、ガスや電気の供給状況、損害賠償や違約金などです。
登記済権利書もしくは登記識別情報
登記済権利書は、登記名義人が不動産の所有者であることの証明書です。
2005年3月の不動産登記法の改正により、登記済権利書の代わりにオンライン対応している登記識別情報が利用されるようになりました、
土地測量図・境界確認書
土地の面積や境界線の位置などが記載されている書類です。
境界線が未確認の場合は、今後トラブルが起きる可能性が高くなります。
土地所有者と話し合い、了解を取り境界確認図を作成して境界を明確にしておきましょう。
固定資産税納税通知書、固定資産税評価証明書
固定資産税額の記載がされているもので、不動産の評価額の設定や税金の算出に必要な書類です。
物件の図面、設備の仕様書
間取り、設備の状況などを確認することができます。
また間取り図を掲載したほうが買い手に物件の魅力を伝えやすく、売却に つなげられます。
また仕様書があることで、買主にも設備の情報が詳しく伝えられます。
建築確認済証、及び検査済証
建築確認済証、及び検査済証は建築基準法で定められた基準で建築されたものである事の証明書です。
またシックハウス対策、省エネ基準などに適合している証明にもなります。
物件の安全性を証明していることで、買主も安心して不動産を購入することができます。
建築設計図書、工事記録書
建築設計図書、工事記録書は、その物件の設計や施工情報について詳しく記された書類です。
リフォームや改修の時に役に立ち、また耐震性など家の強度についてもよく分かる書類です。
マンションの管理規約、使用細則、維持費関連書類
これらの書類により、詳細な管理規約やルール、ペット不可かどうかなど、マンションに住む上で必要な情報を得ることができます。
また、管理費や修繕積立金は購入後ずっと支払うものであり、金額次第では購入の決め手にもなるため重要な情報です。
耐震診断報告書、アスベスト使用調査報告書
新耐震基準が導入される前の不動産で耐震診断を受けた際の報告書があれば、提出しましょう。
アスベストに関する調査を受けている場合も同様です。
買主に安全性が示せます。
不動産売却で特例を利用する際に必要な書類
不動産を売却する際、利益が発生すると譲渡所得税がかかり、その支払いに頭を悩ませる方も多くいます。
しかし、軽減措置特例を使用することで譲渡所得税を減らせるケースも存在します。
手間はかかりますが、特例利用を検討するのがおすすめです。
3,000万円の特別控除
住宅の売却時に発生する譲渡所得税に対する軽減措置です。
こちらを利用することで、課税対象額から3,000万円が控除されます。
この特例を利用するためには
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
- (住民票の住所と売却した住居地が異なる場合)戸籍の附票の写しや消除された戸籍の附票の写しなど、売主が所有していたことの証明となる書類
が必要になります。
軽減税率の特例
不動産の所有が10年を超えた場合、譲渡所得にかかる税金の税率が低くなる特例です。
申請するには、
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
- 売却資産の登記事項証明書
- (住民票の住所と売却した住居地が異なる場合)戸籍の附票の写しや消除された戸籍の附票の写しなど、売主が所有していたことの証明となる書類
が必要になります。
特定居住用財産の買換えの特例
特定居住用財産の買換えの特例とは、マイホームを売却し新たなマイホームに買い換えた際に、譲渡所得にかかる税金の納税を先に延ばすことができるものです。
この特例を利用する場合、主に以下のような書類が必要となります。
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
- 売った家を購入した際の売買契約書
- 売った家を売却したときの売買契約書
- 売った家の所有期間が分かる登記事項証明書などの書類
- 購入した家の登記事項証明書
- 購入した家の売買契約書の写し
- 購入した家の建築済証・確認済証
- 耐震基準適合証明書、建設住宅性能評価書、保険加入証明書等のいずれか(中古物件の場合)
- 住民票(住所が異なる場合)
買主に引き渡しをする際の必要書類
買主に不動産を引き渡す際に必要な書類はいくつかあります。
注意点としては、ローン残高が残っている状態では引き渡しができないということです。
事前にローンを組んでいる金融機関窓口で相談しておきましょう。
本人確認書類
売主の本人確認のために必要となります。
運転免許証、パスポート、マイナンバーカード等、顔写真のついた公的な証明書を用意しましょう。
実印・印鑑証明書
印鑑証明書は前もって印鑑登録を済ませ、発行から3カ月以内のものを用意しましょう。
不動産の所有者が複数いる場合は全員の書類を揃える必要があるため、早めに揃えておきましょう。
住民票
売主の現住所と登記上の住所が違う場合に準備します。
こちらも発行から3カ月以内のものを用意します。
銀行口座の通帳
売却代金は大体銀行振り込みになることが多いです。
口座情報を買主に伝えるため、通帳を確認しておきましょう。
ローン残高証明書またはローン返済予定
まだ住宅ローンの残債がある場合、残債の総額を知らせるために必要となります。
また住宅ローンが残った状態で物件を売ることはできないため、物件を売ったお金や貯金で、住宅ローンを完済しましょう。
その後買主に引き渡す前に、抵当権の抹消を行わなければなりません。
確定申告を行う際に必要な書類
不動産売却を行うと勤め先で年末調整を行っている場合でも、確定申告をする必要があります。
確定申告書・確定申告書第三表
土地や建物の譲渡などによる収益があった場合、その他の所得とは分けて確定申告書第三表に記載する必要があります。
確定申告書付表兼計算明細書(譲渡所得の内訳書)
新たな不動産購入費用よりも不動産売却代金のほうが上回る場合、譲渡所得となり課税されます。
その他の書類
以下は必須ではありませんが、不動産売却の証拠として提出している方が望ましいようです。
- 売却物件の売却時の売買契約書(コピー)
- 売却物件の購入時の売買契約書(コピー)
- 仲介手数料、印紙税などの領収書
不動産売却に必要な書類の取得方法
以下で、書類をどこで取得すればいいかを解説します。
不動産を購入した際にもらっている書類
以下の書類は、不動産取得時に受け取っている可能性があるものです。
紛失している場合は不動産会社に早めに伝えておきましょう。
- 登記済権利証または登記識別情報
- 物件購入時の重要事項説明書
- 物件の図面、設備の仕様書
- 建築確認済証、検査済証
- 建築設計図書・工事記録書
- 管理規約、使用細則、分譲時のパンフレット(マンションの場合)
役所で入手するもの
以下の書類は市区町村の役所で取得することができます。
- 印鑑証明書
- 固定資産評価証明書
- 住民票
不動産会社が用意してくれるもの
下記の書類は、一般的に不動産会社が用意する書類です。
- 登記簿謄本または登記事項証明書
- 売買契約書
- 物件購入時の重要事項説明書
- 設備の仕様書
そのほかの取得方法
なかには調査をして取得しなければならないものがあります。以下はその一例です。
- 土地測量図・境界確認書
- 耐震診断報告書、アスベスト使用調査報告書
これらの書類はマンションの場合は不要、または管理会社が保存している場合があります。
また、固定資産税、都市計画税納税通知書は毎年課税明細書が届いており、抵当権抹消書類は銀行の担当者から受け取ります。
【まとめ】
いかがでしたでしょうか。
不動産会社に査定依頼をしたり売却の相談を持ち掛けたりした時点から、必要な書類を探すように動く方がスムーズに売却が進みます。
不動産売却では、不動産会社の選定、相場確認や内覧、引っ越しなどやることがとても多いため、事前に準備を始めておくことが重要です。