起業時や事業拡大の際、設備投資や運営費として新たな資金が必要になることがあります。
融資などで負債を作ると将来のリスクが高そうで、資金調達を諦めている個人事業主の方もいるのではないでしょうか。
今回の記事では、融資も含めた個人事業主の資金調達方法について詳細を解説します。
資金調達する際の注意点についても紹介します。
個人事業主が資金調達を必要とするケース
個人事業主が資金調達で事業資金を必要とするケースは、
- 開業時
- 事業拡大時
- 災害や感染症等
の主な3つです。
以下で詳しく説明します。
開業時
開業時は登記など手続きのための資金や、店舗やオフィス等の家賃・光熱費、設備投資、売り上げが入るまでの経費・運転資金や従業員の給料など、様々な用途でお金が必要になります。
自己資金を使う場合でも、店舗の改装費や設備が高額になる場合はあらかじめ資金調達を検討している方がいいでしょう。
事業拡大時
事業が軌道に乗り、事業拡大や新規事業を行う場合、新規取引による購入費や新しい備品購入費や設備投資、広告費など、新たに資金が必要になります。
災害や感染症等
感染症拡大時や自然災害発生時に、事業が立ち行かないほどの被害がもたらされた場合、緊急貸付などの制度が創設されることがあります。
例えば、コロナ禍において国から持続化給付金という給付金が支給されました。
これは、新型コロナウイルスの感染拡大のため、営業自粛などで大きな影響を受けている事業者を対象に支給されたものです。
個人や個人事業主の資金調達方法
個人や個人事業主が資金調達する際はどういった選択肢があるのでしょうか。
融資
一般的な資金調達方法と言えば融資。
個人事業主でも審査に通りやすい融資も併せて紹介していきます。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は個人事業主や中小企業を対象に融資を行う政府系の金融機関です。
国が100%出資をしており、金利が低いこと、返済期間は5年から20年以上と借入期間が長いこと、少額からの返済が可能であることが特徴です。
開業資金の支援だけではなく、事業拡大支援も受けることが可能です。
さらに、融資によっては担保や保証人が不要のサービスもあり、起業を目指す人や個人事業主にはぴったりの融資です。
ただし、デメリットとして、審査には数週間かかるという点が挙げられます。
審査のために必要な書類も多く、面談や、ケースによっては店舗・工場訪問などが行われます。
一定の要件を満たし書類がきちんと作成されていれば、比較的融資は受けやすいため、余裕を持って計画的に融資の申し込みを行いましょう。
信用保証協会
信用保証協会は、中小企業・小規模事業者が金融機関から融資を受ける際に、融資が受けやすくなるよう保証を請け負ってくれる公的機関です。
この融資を保証付融資といいます。
保証付融資では、事業者の返済が難しい場合に、信用保証協会が金融機関に立て替え払いを行うことが保証されているため、金融機関の審査が通りやすくなります。
保証付融資は担保や保証人がいらないことがメリットですが、代わりに融資に加えて信用保証料を支払う必要があります。
制度融資
制度融資とは、自治体と信用保証協会と金融機関の三者が連携して行う公的融資制度です。
制度融資は各自治体によって内容が異なり、自治体によっては、日本政策金融公庫より低い金利で融資を受けられることもあります。
しかし、自治体と保証協会、金融機関の3機関が連携して行う融資のため、手続きが多く審査が長くなりがちです。
審査には2〜3週間、長い時は1か月ほどかかることもあります。
信用金庫
信用金庫は特定地域の繁栄を図る相互扶助を目的とした協同組織の金融機関で、ほとんどの取引先は中小企業や個人となっています。
そのため、融資商品も地域密着型のものが多く、日本政策金融公庫に比べると金利が高いですが、その地域で事業を行う個人事業主は利用しやすいでしょう。
銀行
融資と言えばすぐに思い浮かぶのが銀行。
しかし、銀行が直接審査を行うプロパー融資の審査は厳しく、法人以外が融資を受けるのは簡単ではありません。
ただし、他の資金調達法と比べて融資の上限金額は大きいという特徴があります。
取引実績が増え信用力が高まっていけば、プロパー融資を受けられる可能性があります。
補助金や助成金の利用
国や自治体が実施する補助金制度や助成金制度を活用する手もあります。
この制度を利用するメリットは、融資とは違い、返済の必要がないという所です。
補助金
中小企業が使用できる補助金には小規模事業者持続化補助金、ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金などがあります。
補助金は、事業の内容などが指定された要件に該当していること、その後の審査に受かることが必要です。
また、審査に受かった後もすぐに補助金はもらえません。
事業を行い、報告書を提出した後に入金されるため注意してください。
助成金
助成金には人材開発支援助成金などがあります。
助成金には補助金のような厳しい審査はありませんが、事業を行った後に申請を行うため、事業を始める前にはお金が手に入りません。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネット上で不特定多数の人々から資金調達することです。
融資と比べると少額ですが、審査がなく、比較的早く簡単に資金が手に入れられる方法です。
資金のリターンとして製品やサービスが手に入るものや、リターンがほぼない寄付のようなものなど、様々な種類のサービスがあります。
ただし、目標金額に達しなければ、それまでの資金は獲得できず、出資者の元に戻ります。
ビジネスローン
ビジネスローンは、企業や個人事業主が借りることができる、事業用資金専用のローン商品です。
銀行やクレジットカード会社、消費者金融など様々な企業がこのサービスを提供しています。
銀行や公的機関からの融資と比べると、必要な書類や手続きが少ないためすぐに資金調達ができるというメリットがあります。
デメリットとして金利が高く、借入上限額が低いという点が挙げられます。
ファクタリング
ファクタリングとは、まだ代金が支払われていない売掛債権をファクタリング企業に売却し現金化するという方法です。
ファクタリングのメリットは比較的早く資金が調達できること、売掛先の業績が審査に反映されるため、自社の収益が低くても多額の資金調達が可能になる場合があることです。
デメリットはファクタリング企業に手数料を払う必要があり、資金額が増えれば増えるほど手数料もあがることです。
個人事業主が資金調達する際の注意
なるべく自己資金を準備する
融資の審査の場合、準備した自己資金があればある程度の返済能力があると見なされます。
特に開業時の場合は、少しでもいいので自己資金があるのが望ましいでしょう。
もちろん、融資の審査では事業計画なども含めて総合的に判断されるため、自己資金がないと融資が受けられないというわけではありません。
また、家族や親族からの借金やカードローンやクレジットカードのキャッシングなどでお金を借りても、自己資金とはみなされないことに注意してください。
資金調達は開業後よりも開業前
開業後事業がうまくいかず融資を頼むという流れの場合、一度失敗したという結果が出てしまったため、審査に通りにくくなります。
開業前の場合、しっかりした事業計画と返済計画があれば審査に通る可能性が高くなります。
自己資金があっても、万が一を考えて融資を受けたいのであれば、開業前がおすすめです。
早めに資金調達を開始する
個人事業主向けの融資や補助金・助成金は入金まで時間がかかります。
また、個人事業主本人が本業以外の経理や事務作業を行っている場合、忙しく状況の把握が遅れて、資金難になってしまう…ということも。
個人事業主は、日々資金の状況を確認し、事前に資金調達方法や条件を調べ、早めに行動することが重要です。
【まとめ】
個人事業主が資金調達を行う手段は融資以外にも、助成金や補助金、クラウドファンディングやファクタリングなどがあります。
どの方法もメリットデメリットがあるため、よく考えて資金調達を行いましょう。
わからないことがあれば、税理士に相談するのも一つの方法です。