スタートアップ企業やベンチャー企業で最も重要と言える資金調達。
一体どのような種類の資金調達方法があるのでしょうか。
今回の記事ではスタートアップ企業やベンチャー企業がよく利用している資金調達法について解説します。
資金調達で失敗しないコツも紹介します。
ぜひご覧ください。
スタートアップの資金調達①投資家や投資会社からの出資
スタートアップの資金調達において、投資家や投資会社からの出資は大きな役割を果たします。
投資側からの出資のリターンとして株式を発行する資金調達法をエクイティファイナンスと呼びます。
このエクイティファイナンスの主な投資側として、エンジェル投資家やベンチャーキャピタル(VC)が挙げられます。
エンジェル投資家とは
エンジェル投資家は、個人としてスタートアップやベンチャー企業に資金を提供する投資家です。
エンジェル投資家は事業の初期段階に投資し、返済義務のない初期資金を提供します。
また、自身の経験や人脈を通じてスタートアップを支援し、経営に関わることもあります。
ベンチャーキャピタル(VC)とは
ベンチャーキャピタルは未上場のスタートアップ企業やベンチャー企業に対し資金を提供し、上場後その株を売って利益を得るという、投資専門の会社やファンドのことです。
ベンチャーキャピタルの出資も返済義務がないというメリットがあります。
また、ベンチャーキャピタルもこれまでのスタートアップ企業やベンチャー企業への出資経験を踏まえ、取引先やコンサルタントなどの紹介や経営支援を行うことがあります。
ただしエンジェル投資家と同様、経営に強く関わるだけではなく、場合によっては経営権を握られる可能性もあります。
投資家や投資会社からの出資が行われる主な資金調達ラウンド
資金調達で重要になってくるのが、資金調達ラウンドという考え方です。
資金調達ラウンドとは、投資先の企業がどういった状況なのかを段階的に分けて分類したものです。
ラウンド | 概要 |
シード期 | 起業前の準備段階。アイデア段階で、具体的な商品、サービスはまだない。 |
アーリー期 | 起業直後で軌道には乗っておらず、赤字が続く。 |
シリーズA | 事業や経営が本格始動し、軌道に乗り始める時期。 新しいサービス・製品開発段階 (新規顧客の獲得、追加機能開発なども含む) |
シリーズB | サービス、製品が市場に受け入れられた状態。開発やマーケティングなどの投資を積極的に行う。 |
シリーズC | 黒字経営が安定してくる。IPOなどを意識する段階 |
一般的には以上の表の様に5段階に分けて考えます。
ただしラウンドの名称・定義は様々で、各投資側によって異なります。
6段階になるところもあるため、注意しましょう。
エンジェル投資家の主な資金調達ラウンドはシード期・アーリー期で、ベンチャーキャピタルは全てのラウンドで出資を行います。
これはシリーズAからは調達資金額が億を超えることがほとんどで、 企業や金融機関からの出資がメインになるためです。
スタートアップの資金調達②金融機関からの融資
スタートアップの資金調達において、金融機関からの融資を活用する方法は、デッドファイナンスと呼ばれます。
出資を受けるエクイティファイナンスとは異なり、金融機関からの借入によって資金を調達する方法です。
金融機関からの融資には
- 公的機関からの融資(日本銀行、日本政策投資銀行、日本政策金融公庫、商工組合中央金庫、住宅金融支援機構など)
- 銀行からの借り入れ(銀行からの直接融資であるプロパー融資と地方自治体・金融機関・信用保証協会が連携して、企業に融資を行う制度融資の二つがある)
- ビジネスローン(銀行などで提供されている開業資金や設備資金などに対する融資)
- シンジケートローン(いくつかの金融機関で、同じ約定条件によって融資を行うこと)
などがあります。
金融機関からの融資のメリット
〇利息を損金計上できる
融資を受ける場合に生じる利息。
この利息は税務上「損金」として計上でき、その年の所得から差引けるため節税効果があります。
〇投資家の影響力を考慮しなくていい
エクイティファイナンスでは、投資家に資金を渡す代わりに株式を渡します。
そのため創業者の持ち株比率が低下し、投資家が経営に強く影響力を持つリスクがあります。
デッドファイナンスでは融資を受けても返済義務があるだけで、株式の分配はありません。このため、経営権を保持しつつ必要な資金を確保することができます。
金融機関から融資を受けるデメリット
〇元利金の返済義務が生じる
借入金には返済義務があり、利息も発生します。
そのため、十分な収益を上げられない場合返済が困難になる可能性があります。
借り入れ前に借入額や返済計画を慎重に検討し、過度な借入を避けることが重要です。
〇融資を受けられない可能性もある
融資は、スタートアップ企業が事業計画や財務状況を示し、融資を受けるための審査を通過する必要があります。
この審査では、事業の収益性、返済能力、担保の有無などが評価されます。
スタートアップは通常信用が乏しいため、初期段階では融資が難しいこともあります。
審査を通過するには、事業計画をしっかり練ることが必要です。
金融機関からの融資が行われる資金調達ラウンド
金融機関の融資は、どの資金調達ラウンドで行われるのでしょう。
一般的には以下の様になります。
シード期→日本政策金融公庫の創業融資制度
アーリー期・シリーズA→日本政策金融公庫、信用金庫、地方銀行などからの融資
シリーズB・C→日本政策投資銀行、メガバンク含む民間金融機関からの融資
あくまで目安であり、事業計画や収益性によっては変わることもあるため注意しましょう。
スタートアップの資金調達③国や地方自治体からの助成金や補助金
国や地方自治体から事業主に給付される資金が補助金・助成金となります。
両方とも返済不要ですが、補助金は審査を通過した事業者が国や自治体からもらえる資金、助成金は厚生労働省の管轄で審査はなく要件を満たしていればもらえる、という違いがあります。
スタートアップ企業やベンチャー企業が使える補助金には
- 事業再構築補助金
- ものづくり補助金
- IT導入補助金
- 小規模事業者持続化補助金
助成金には
- 業務改善助成金
- 働き方改革推進支援助成金
- 労働移動支援助成金
- トライアル雇用助成金
- 人材開発支援助成金
などがあります。
補助金・助成金のメリット
補助金・助成金は融資とは違い、返済不要です。
また出資とは違い、出資者に口を出されたり経営権を取られたりすることもありません。
気負わずに新しい事業に挑戦できます。
補助金・助成金のデメリット
補助金のデメリットは前もって資金がもらえないということです。
一定期間事業を行って報告書などを送り、適切な事業を行ったかどうかの判断後に入金が確定します。
また申請や審査を経るため、入金されるまでの時間が長くかかる点も注意しましょう。
補助金・助成金の融資が行われる資金調達ラウンド
返済する必要のない補助金・助成金はどのラウンドにも向いている資金調達方法です。
ただし、補助金・助成金はきっちり要件が決まっているため、自分の業務内容・状況にあてはまる補助金・助成金はどれか、要件を満たしているか必ず確認してください。
スタートアップの資金調達④クラウドファンディング
クラウドファンディングとは「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」を組み合わせた造語で、インターネット上で不特定多数の人々から資金調達することを言います。
金融機関からの借り入れやベンチャーキャピタルなどの出資と比べると少額ですが、審査がなく、他の調達方法と比べて比較的早く簡単に資金が手に入れられます。
クラウドファンディングには、資金のリターンとして製品やサービスが手に入る購入型、株式がもらえる投資型、リターンがほぼない寄付型などがあります。
クラウドファンディングのメリット
クラウドファンディングのメリットは手軽に資金が手に入るということです。
従来の融資や出資のような複雑な手続きがなく、サイトに登録するだけで資金調達が可能です。
クラウドファンディングのデメリット
クラウドファンディングには目標金額があります。
そこに達しなければ資金はもらえず、集まっていた資金は出資者の元に戻ります。
また目標金額を達成しても、クラウドファンディングサービスに手数料を支払う必要があるため注意しましょう。
クラウドファンディングの融資が行われる資金調達ラウンド
クラウドファンディングは主にシード期の資金調達方法です。
シード期はまだ多額の資金を必要としない段階なので、他の資金調達方法と比べて少額のクラウドファンディングは適切と言えるでしょう。
スタートアップの資金調達⑤ファクタリング
ファクタリングとは、まだ代金が支払われていない売掛債権をファクタリング企業に売却し現金化するという方法です。
ファクタリングでは他の資金調達方法と比べて早く資金が調達できることもあるため、成長中のスタートアップ企業でよく使われる資金調達方法です。
ファクタリングのメリット
ファクタリングは売掛債権を売却することで資金を得ます。
売掛先の業績や信用が反映されるため、自社の収益が低くても売掛先によっては融資と比べて多額の資金調達が可能になるケースがあります。
ファクタリングのデメリット
ファクタリングを行った場合、ファクタリング企業に手数料を払う必要があります。
手数料の額は企業によって違うため確認しましょう。
また三者間ファクタリングでは売掛先に通知がいくため、資金繰りの悪化を疑われるリスクがあります。
ファクタリングでの融資が行われる資金調達ラウンド
売掛金の額にもよりますが、すぐに大きな額を現金化できるファクタリングは全てのラウンドに向いています。
ラウンドが上がれば上がるほど調達資金も増え、ファクタリング企業に払う手数料も上がる事に注意しましょう。
スタートアップの資金調達で失敗しないためのコツ
スタートアップの資金調達で失敗しないためには、以下のコツを押さえることが重要です。
事業計画に合った資金調達計画か
資金調達の成功には、詳細で現実的な事業計画をベースにした資金調達計画が必要です。
これにより、投資側に対して事業の可能性と成長戦略をはっきりと示すことができ、信頼を得やすくなります。
ここがあやふやなままに資金調達を行っても経営はうまくいきませんし、投資側や融資者からの信用を得られません。
計画は事業のステージごとに見直し、適切な資金調達目標を設定することが重要です。
株を放出しすぎない
起業直後に多くの株を放出すると、創業者の持ち株比率が低下します。
これは投資家に経営権を取られ、行使できる権限が少なくなる可能性があります。
初期の資金調達ではできるだけ少量の株式で必要な資金を調達し、事業が成長して価値が高まった段階で次のラウンドの資金調達を行うという戦略が有効です。
償還期限
デッドファイナンス(融資)を利用する場合、借入金の償還期限を確認し返済計画を綿密に立てることが重要です。
投資家や金融機関から集めた資金は通常10年の償還期限が設けられており、それまでに元本+利益という形で返還する必要があります。
返済期限を過ぎると企業の信用に影響を与え、追加融資の難易度が高くなる可能性があります。
更に返還できない場合、保有する株を売却するように出資者から求められる可能性があります。
無理のないような返済スケジュールを設定しましょう。
【まとめ】
スタートアップ企業にはいくつかの資金調達方法があります。
ラウンドや経営状況によってどの資金調達方法が適するかは異なるため、慎重な判断が求められます。
しっかりとした計画と準備、法的な確認と慎重な戦略が、スタートアップの成長と持続的な経営を支える基盤となります。